指定されて場所について、警備をしていた男性に名前を伝えると、1人の若い男性が空澄の前にやってきた。少し長めの銀髪を後ろで1つにまとめているおり、顔は中性的な美人だった。切れ長の目とシュッとした顎は、どこかのモデルのようだった。しかし、彼の服を見た瞬間に、空澄は驚いた。普通の警察官が着ているものではなかった。
 真っ黒な帽子に、ベルトが着いた黒いジャケット、中には白シャツと黒ネクタイ。黒ズボンに黒いブーツ。まるでドイツの軍服のような服装。それを着用しているのは特殊な人達だとこの国に住む人ならばしらない人はいないだろう。


 「魔女官………なんで………」


 空澄は思わず声を漏らしてしまう。
 すると、その男性は一礼した後に、微かに笑みを浮かべながら空澄を見た。それは、安心させるというよりも、見下したような冷たい表情だった。


 「先程電話した小檜山です。こちらまで来ていただき感謝致します」


 そうやって、小檜山はまた小さく頭を下げた。短い髪のせいか、纏められなかった髪が揺れて彼の顔を隠す。この度に艶のある銀髪がキラキラと輝いていた。