今は彼と一緒に魔女の店を細々とやっている。少しでも誰かの役に立てるならならと、始めたところ、「尚美さんと同じ力がある」と評判になりはじめて、最近はお客さんも増え始めた。希海は「よかったな」と懐かしそうに笑ってくれた。彼は癒し系の薬よりも、お守りの方が得意なようで、魔除けや縁結びのまじないをして、有名になっていた。


 「…………希海。私、魔女になってよかった」
 「………うん。俺も、嬉しい。おまえとこうやって抱きしめ合えるのも、おまえがそれを選んでくれたからだ」
 「これからも、ずっと見ていてね」
 「あぁ………当たり前だろ」


 鴉の羽のように艶のある髪が頬に触れ、そして、彼は小さく唇にキスをしてくれる。

 危険な事もあるだろう。
 また、泣いてしまう事もあるかもしれない。

 けれど、もう弱い自分ではない。
 守ってくれる人が居るから。守りたい人がいるから、きっと大丈夫。

 そんな幸せを胸に、空澄はゆっくりと目を閉じたのだった。


               (おしまい)