「璃真と話したかったんだけどな……夜は会えるよね」

 
 朝、璃真と会えなかっただけなのに、空澄は何故か不安を感じてしまっていた。
 いつもと違う朝は、酷く寂しいからかもしれない。
 いつもより早く朝食を食べ終えてしまった空霞は、早めに家を出ることにした。海のためのチーズを冷蔵庫から出して、玄関に向かう。
 それだけで、ため息が出てしまった。


 「海………うみー?」


 いつものように庭を探すけれど、海の姿はなかった。今までそんな事は1度もなかったので、空澄は心配になり家の周りをまわってみたが、海の姿はなかった。


 「………どこいったんだろう。海までいない朝なんて……なんか、寂しいな」


 海を探したかったけれど、仕事に遅れてしまうため、空澄は庭にある岩の上にチーズを置いていく事にした。帰ってきて海が居る事を願いながら、空澄は空を見上げる。まだ肌寒い朝だけれど、風は少しずつ温かくなっている。そんな春を感じられる天気だけれど、空澄はため息と共に家を出たのだった。
 
 すると、近くでサイレンの音が鳴っていた。パトカーや救急車の音が辺りに鳴り響いていた。何かあったのだろうか?そう思いながらも、空澄は音が聞こえる反対の方向の駅へと向かった。
 サイレンの音の事は、駅に着く頃には全く忘れてしまっていたのだった。