小檜山は空澄の魔力しか見ていなかった。
 うっとりした瞳で、その魔力を手に入れた自分を想像して酔いしれているのだろう。
 空澄の魔法も使えない。希海は麻痺のせいで、思考も体も朦朧としているようだった。
 このままでは本当に小檜山に捕まり、魔力を供給するだけの生きた人形になってしまうのだろう。

 小檜山の魔法のせいだろう。
 氷が体を覆い、いつの間に空澄の体の半分が氷の膜に埋まっていた。


 「いやっ!やめて………」
 「魔法を使われては面倒ですからね。………大丈夫、死なないようにはしておきますから」
 「…………助け………て」
 「空澄っ!!」


 口まで凍りついて、もうダメだと思った。最後に弱々しい希海の声が聞こえてきた。
 瞳から暖かい涙がこぼれた。今まで感じたこともないような、とても熱い涙だった。だが、それさえも凍ってしまう。
 空澄が恐怖から瞳を閉じようとした。

 が、胸の辺りでとても温かい温度を感じた。

 すると、燃えるような熱くなり、空澄は驚いて目を開ける。すると、目の前が煌々と光り輝いていたのだ。そして、その光からは熱が発せられ、どんどん凍りが溶けていく。それでも火傷するほどではない。とても心地のよい温かさを放つ不思議な光だった。