いつも通りの時間にスマホのアラームが鳴る。
 空澄はモゾモゾとベットの中で体を動かしてあくびをしながらアラームを止めた。カーテンから明るい朝日が見える。いつもと変わらない朝のはずだが、何かが違う。空澄は首を傾げながらも理由がわからず、そのまま身支度の準備をする。それもまた変わらないルーティーンだった。

 準備を終えて大きなあくびをしながら1階に降り、その時にやっといつもの違いに気がついた。コーヒーや朝食の美味しい匂いがしないのだ。
 ダイニングに行くといつも「おはよう」と、笑顔で迎えてくれる璃真の姿がなかった。そして、テーブルに並べられている朝食もお弁当もないのだ。


 「………璃真?………今日って朝早くに出勤する日だったのかな?」


 空澄は玄関に行くと彼がいつも履いている革靴がなくなっていた。もうすでに家を出てしまっているようだった。
 空澄より早く出社する事も時々あったけれど、その時でも朝食やお弁当は準備されていた。珍しく寝坊でもしたのだろうか。そう思って、空澄は食パンをトースターに入れ、インスタントコーヒーを準備し、焼けたパンにジャムを塗って食べた。テレビの音だけが聞こえる静かな朝食だった。