30話「氷の魔王」





 「っっ……………あぁ………夢か」


 起きたばかりの目を擦りながら、希海はゆっくりと辺りを見回した。そこは変わらずの白い天井。小檜山に捕まった時のまま、何処かの牢屋だった。ため息をつきながら起き上がり、自分の体状態を確認する。まだ、あれから血液をとられた様子はないようだった。そのため、自分の魔力が全快ではないが回復してきていた。


 「そろそろ、血液の採取にくるはずだから………それがチャンスだな………」


 独り言を呟き、希海はまた横になった。
 魔力を使わせないように警官は希海のところに来て血液を採取するはずだ。その時が脱走のチャンスだと思っていた。


 すると、タイミングよく外からカツカツと音がした。1人ではなく2人いるようで、足音が重なって聞こえる。見回りなのか、それとも希海の採血に来たのか。希海はジッとベットに横になり寝たふりを続けた。そのゆったりとした足音は、希海の前で止まった。ガチャガチャとカギを開ける音が聞こえたので、希海は緊張しながらも時を待った。


 「………寝てるな」
 「さっさと血だけ採ってしまおう。小檜山さんに報告しなければならないからな」
 「あぁ」