29話「最後の作戦」




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 どんなに魔力を持っていても、どんなに強力な魔法を持っていても、変えられない運命というものもある。
 それを希海は実感していた。

 1つは、自分自身についた鴉の呪い。
 それは代々受け継がれてきたもので、代を重ねるごとに強くなっていると言われていた。つまり最後の代であった希海は、最悪な呪いとなっていた。それを行使している花里のものではえ、勝手には呪いを変える事が出来なかった。空澄の両親も同じだった。死ぬことでしか、呪いを解除できないのだ。魔女の世界が認めてる純血の力をもってしてでも、敵わないのだ。

 そして、もう1つ。
 それは、運命で決まっている死だ。
 どんなに回避しようとしても、決められたかのように死んでしまう人がいるのだ。
 花里の両親。そして………目の前いる璃真だ。



 「で、今はまだ璃真なんだな?」
 「まぁ……かろうじでね。でも、そろそろダメかも」


 目の前にいる璃真は10年前に事故で死んでいた。希海は事故にあった時に彼の傍にいなかったが、彼は希海が教えた魔法を使って、自分の体を乗っ取ろうとしていたリアムを封印した。自分の体の中に。そうする事で彼の魔力を使い、10年という長い年月を意識だけを持って生きていた。体は死んでいるというのに。
 リアムの得意魔法は憑依。生き物に憑依することを得意としていた。それは生きたものや、死んでしまっても骨などの生き物のものであればその者の生前の姿で現れる事が出来るのだ。そのため、璃真は死んだ体でも憑依は可能だった。

 だが、この日は10年という魔法が終わりを迎える日だった。