26話「真実を知るとき」



 冷たい床にシミがある白い壁。
 窓には鉄格子がついている。
 希海は先程の取調室より酷い場所に入れられてしまった。


 
 小檜山に「逮捕する」と言われた瞬間に、魔法を発動しようとした。が、何も起こらなかった。呆気にとられ、自分の手のひらを見つめていると、小檜山はツンッとした表情で飄々と答えた。


 「この部屋は魔法が使えないのです。魔力を封じるまじないがされています」
 「それはおまえも使えないって事だろ?」
 「はい。………ですが、私には何にも問題はありませんので」
 「っっ」


 小檜山は言葉を言い終わった瞬間に、物凄いスピードで希海の元に駆け寄ったのだ。咄嗟に後方へと跳んでそれを回避したが、それも小檜山はよんでいたのだろう。希海が跳んだ先には、すでに小檜山が居たのだ。「まずいっ!」と心の中で叫んだ希海は、すぐに腕で顔をガードしていたが、そこに軍服の黒いズボンとヒールの靴が飛んできた。勢いがある蹴り。希海は苦痛から「くっ!」と声が漏れ、体は横に飛ばされてしまい、壁に体をぶつけた。だが、そこで終わる希海ではなかった。使い魔として、子どもの頃から尚美を、そして空澄を守るために魔法だけではなく体術を鍛えてきたのだ。
 壁にぶつかった反動のまま、希海は壁を思い切り蹴って、小檜山に迫った。
 希海の反撃は予想外だったのか、小檜山は驚いた表情だったが、口元は笑っていた。希海は嫌らしい奴だと思いながら、反撃と言わんばかりに彼の顔に殴りかかった。
 が、その攻撃は当たらなかった。
 気づくと手首を小檜山に捕まれていた。