「シングルベットに大人2人は………けっこうキツイね」


 希海は身長も高く、がっしりとした体格のため、ベットが狭く感じられる。2人で寝るのは失敗しただろうか。そう思いつつも、いつも以上に近い距離に、空澄はドキドキしながらも嬉しくなってしまう。好きな人にもっと近づいたいと思うのは男女共に同じであろう。
 希海が窮屈そうかもしれないと思いつつも、空澄はこのままで寝てたいなと内心思っていた。


 「狭いならもっとくっつけばいいだろ?」
 「………っっ………」


 布団の中で希海が空澄の体を抱き寄せた。
 いつもより熱く感じてしまうのは、きっと布団の中だと思うようにしながら、空澄は赤くなった顔を隠すために彼の胸に顔を埋めた。


 「あ、空澄。寝る前にさ……」
 「え、何………?」
 「………おやすみ………」


 空澄が顔を上げて希海の顔を見た瞬間。
 希海は空澄の唇にキスを落とした。
 
 今日最後の挨拶。そして、キス。
 希海は慈しむように優しい微笑みを浮かべながらそう言うと、空澄の後頭部をゆっくりと押して、自分の胸の中に空澄を閉じ込めた。

 希海の体温と香り、そして鼓動。
 感覚全てが彼で満たされる。
 恥ずかしくて眠れないと思っていたはずだったが、それは杞憂に終わる。

 人肌の感触や隣に大切な人が居てくれるという安心感から、あっという間に眠りについたのだ。
 それは2人がほぼ同時だったのを、お互い知る事はなかった。