彼の綺麗な字。それは紛れもなく璃真の字でかかれた、空澄への手紙だった。
 空澄は目を大きくしてそのノートの字を見つめた。ドクンドクンッと鼓動が早くなる。
 璃真は彼女が魔女とは知らないはずだ。それに、予定日に死ぬとはどういう事なのか。全くわからなかった。けれど、彼自身が自分が死ぬ事をわかっていたのだろうか。

 呼吸がおかしくなり、混乱に陥りそうだった空澄だったが、何度か大きく呼吸を繰り返し、何とか落ち着きを取り戻した。
 長い手紙の続きに視線を落とした。


『魔女になったのならば、きっと君が狙われる事があるだろう。だから、気を付けてほしい。君の両親が残した魔法が地下室にあるから、それを使って欲しい。もしかして、君が鴉と呼んで可愛がっていた海、希海も一緒なんだろうね。その人にもいろいろ教えて貰うといいよ。
 そして、僕が遺した物は全て君の物だよ。部屋にあるものも、もちろん、僕のお金も。通帳は、クローゼットの二段目。赤と黒のセーターの間に隠してある。暗証番号は君の誕生日。
 大切な君を残していくのはとても寂しい。けど、死んだはずだったのに、ここまで生きれたんだ。僕は幸せだったんだろうね。
 今まで僕に楽しい時間をくれてありがとう。
 空澄と過ごした時間が何よりも楽しくて、君の笑顔を見れる瞬間が何よりも幸せだったんだ。
 空澄が僕を選ばないのはわかっているよ。きっと、僕たちは近くにいすぎたんだろうね。君は誰かと幸せにならなきゃいけない。君が僕を好きになっていたとしても、それを僕は拒まなきゃいけなかったのだから………それより、ずっといい。ずっと僕は君と楽しく過ごせたのだから。
 幸せに生きて。
 それが、僕の願いだよ。

             新堂璃真』