21話「幸せと企み」




 希海は相手の気持ちがわかる魔法を使っているのではないか。そんな風に思ってしまうぐらいに、空澄の心の移り変わりを理解しているように感じられた。

 だからこそ、「キスをしたい?」と聞けるのではないか。空澄が寂しがっているのをわかって聞いているのではないか。空澄はそう思えてならなかった。


 「………希海は、魔力譲渡がなくてもキスしたい?」


 質問に質問で返すなんてダメだとわかっている。けれど、空澄が1番知りたい事がそれだったので、そう聞いてしまった。
 言葉にした後に、これでは自分はキスしなくなるのが寂しいと言っているようなものだと思ったけれど、それは後の祭りだ。
 空澄は希海の返答を待つしかなかった。

 すると、希海はニッコリと笑って「したいよ」と言った。いつもの優しい笑みの中に、色っぽさを感じてしまい、空澄は思わす視線をそらした。希海はくくくっと笑って「自分から聞いたんだろ」と恥ずかしくなってしまっている空澄を見て笑った。
 けれど、その表情はすぐに一変した。まっすぐな視線とキリッとした表情になったのだ。