18話「魔法の薬」



 魔女の力を使ってしまった。
 けれど、あのままでは自分がまた怪我を負っていたかもしれない。あれは仕方がない。

 けれど、男の子は怪我をしたかもしれない。あんな力を使うよう必要はなかったのではないか。
 だが、あの男の子も魔王だったかもしれない。

 けれど、自分より小さな存在にあんな強い力は必要だった?




 そんな事を心の中で考えながら、空澄は自分の掌を見つめた。あれはまさしく自分がやった事なのだ。カタカタと手が震えた。
 自分がやった事に恐怖を覚えた。まだ呪文を唱えていなかったのに、なぜ魔法は発動されたのか。風の力だけは、沼で溺れそうになった時なら勝手に使えてしまっていたのだ。

 空澄は涙を拭きながら、残りの帰路を急いだのだった。


 やっとの事で家の前に到着した。
 こんな事になるならば、電車に乗ればよかったなとため息をついた。

 希海は帰ってきているだろうか。
 こんな姿を見たらきっと驚くだろう。帰ってきていない事を祈りながらドアを開ける。