「顔が真っ白じゃないか………何かあった?体調悪いのか?」
 「………よかった、璃真が何ともなくて……」
 「………空澄。……ごめん、連絡もしないで。来る途中もタクシーの中で電話対応とかしててなかなかメッセージ送れなかったんだ」


 空澄の言葉を聞いて、璃真はどうして空澄がこのようになったのかを全て理解したようで、申し訳なさそうに謝罪をした。
 けれど、空澄にとってそれはどうでもいい事だった。
 彼が無事だった。それがわかれば良いのだ。


 「今日の食事会止めておこうか?」


 璃真は空澄の体を支えながら、優しく顔にかかった髪を指でよけ耳にかけてくれる。そして、心配そうに顔を覗き込んだ。


 「大丈夫……今日は楽しみにしてたから行きたい。それに璃真の顔見たら元気になった」  「そう。……なら行こうか」
 「うん」


 空澄は心配そうな彼に笑顔を見せて、立ち上がった。やはり不安になっていただけなのか、先程の目眩や寒気は感じなくなっていた。


 「心配だから、僕の腕に掴まって歩いて」
 「大丈夫だって。心配症なんだから」
 「それは空澄だろ?」
 「そんな事ないよ。いざって時は、お母さんから教えてもらった呪文があるもの」
 「………それ、早く聞いてみたいんだけど」
 「ダメだよ、本当にピンチの時しか口にしちゃいけないって言われてるんだから」
 「なるほど」


 得意気に笑い、空澄は歩き始める。それを見て、ホッとした苦笑しながら璃真は歩き始めたのだった。