これ以上は池森先輩も知らなかった。だからあたしもこれ以上は知らない。

 奴の意識は、最期まで、戻らなかったという。

 奴が息を引き取ったのは11月の末、冬が始まる季節だった。

 奴が死んだと聞いた時、あたしは涙を流さなかった。

 悲しくもなかった。

 ただ一言、「そう」と答えただけだった。

 あたしの中で奴はあのとき逝ってしまったのだ。

 あたしの伸也は・・・最期にあたしに「さよなら」と言って・・・