あたしが髪を切ったわけ

「いい天気だね」

 あたしの右から風の音を通して奴の声が耳に届く。

「うん、いい天気」

 あたしも風に目を細めながらこたえる。

 う〜ん気持ちいい。いつまでもこの時間が続くといいな。

「あのさ」

 だいぶ声が近いな。

 顔を向ける。

 わっ、目の前、20センチないぞ。

 奴の息遣いまで伝わってくる。

 いつのまにか肩を触れ合って、2人して海を眺めていたみたい。

 端から見れば仲のいい2人に写るに違いない。

 いや、海を眺めていたのはあたしだけで、奴はあたしを見ていたのかもしれない、ずっと。

 自惚れがちょっと入ったかな?

「なに?」

 どんどん鳴る胸の様子を顔に出さないように気をつけながら、少女のような線の細い奴の顔を正面から捕らえる。