あたしが髪を切ったわけ

 奴の名は・・・

「ぼく、森山伸也」

 「もりやましんや」だそうだ。

 何者かってぇと・・・

「美術部の部長をやってます」

 そう、このなよった野郎が、あたしより一年先輩で、しかも部長だったのだ。

 あたしはその時まで、部会のときなんかに偉そうに前に出て進行役をやってる眼鏡を掛けた長身の人が、部長かと思ってた。

 まぁ、けっこう部会ってさぼってるけどさ。

 よく考えてみれば、夏休み前にそれまでの部長が引退してから、部長と名乗ってる人を見掛けなかったな。

「えーと、伊良沢さんだよね」

「はい、そーですけど」

「池森に今日あたり来てるってきいたんだけど、よかった。だれもいないと思ってたからさ。それに違ってたら恥ずかしいもんね」

 いけもり?池森ってだれだっだっけ、そうだ、あの眼鏡で長身の人か。

 で、何のようなんだ?

 あたしが不思議そうな顔をすると、奴は、「ああそうか」という顔をして話し始めた。