午後十二時。


温かく心地が良いお昼の時間。



自分の部屋で万年筆を握る太宰治。


令奈に手紙を書いている。





【令奈へ


僕は気持ちを伝えるのに、


面と向かって話すことよりも。


こうして、万年筆を握り、


書くことの方が得意だ。


単刀直入に言うと、僕は令奈のことが好きです。



僕は好きになると真っ直ぐで。



そのままの気の持ちをまるごと勢をつけてぶつけてしまいたくなる。




もし、何かと引き換えるならば──。



僕の命が果ててもかまわないぐらい、令奈のことが好きです。



君は、また大袈裟だなと思うかもしれないが。



本当に僕はそうなってもいいぐらいの覚悟で令奈のことが好きです。



これは、決して冗談のつもりで言っている訳じゃないことをわかって欲しい。



僕達は少し似ている部分がある。




僕達の目に見えない傷。




いつか、癒される時が早く来ればと思う。



僕はやきもち焼きで、わがままな所も自分で納得をしている。





僕は今から大事な事を言う。


迷う必要はない。



令奈が思う好きな人に飛び込んで行けばいい。




きっと、君ならできるだろう。



令奈…………………、 】







万年筆のインクがまたかすれる。



……書きたい事がまだうんとあるのだが。



最近、いくら書いても頻繁に万年筆のインクがかすれるばかりで。