そんなことをしていると、



令奈が瞬間凍結でもしたように固まった。



彼女の遠い視線の先に同じ年代ぐらいの男の子が歩いているのがすぐわかった。




令奈、もしかして、あの子が西川くんなんじゃないのか?




【令奈、あの子、知っている子?】




令奈が頭を縦に振り頷いた。



単刀直入に僕は聞いた。



【あの子のこと、好きなのか?】



令奈の顔が赤面した。



【そんなんじゃないから……】




【本当にそうなのかな?】




【もう、いいから……!】





【ああ、もうわかったよ。あの子が西川くんだね!】




【もしかして、昨日の話を聞いていたんですね!?】




【ごめん。聞こえてしまったんだ……】




完全否定しきれない令奈の真っ赤な顔を見ればもう振られたも同然だと心の中で泣いていた。



再び本に伸ばそうとした僕の手を恐い顔をして令奈が止めた。




どうして、そんなに僕の手を止めたがるんだ……。




【太宰さんは、まだ読まない方が……】




【僕が読まない方がいい本……】




【太宰さん、生きてください。もっと、もっと、生きてください!】




【僕は生きているよ】