〔令奈side〕


台所。


太宰さん。



あれっ、太宰さん。



洗面所。



太宰さん……。




太宰さんはどこにいったの?




太宰さん。




太宰さんの部屋のドアをそっと開けた。



太宰さん、




太宰さん……、



──いなかった。





太宰さんの姿はなかった。



やっぱり、どこにもいない。



でも、机の上に白い紙と万年筆だけが残されていた。




万年筆を握るとまだ少し暖かった。



予告もなく、急にいなくなるなんて……、凄く寂しいな。




太宰さんから私宛に書かれている手紙だった。




そっと手にとって、読んだ。




太宰さん……。



うそでしょ……。



太宰さんは、もう戻ってこないの……。




私は太宰さんの本を手にする度に、太宰さんのことを思い出し……。




私は、太宰さんのことを生涯忘れない。