「雨、強くなってきたね」

「うん」

「どうする?傘あるけど
落ち着くまで少し待ってようか?」

「…うん。待ってようかな」



窓の外の荒れた景色を眺めながら私は頷いた


さっきからずっと雨足は強まる一方
傘があったとしても
このどしゃ降りの中、歩いて帰るのは気が引ける



「……へへ」

「何笑ってるの、幹也」


窓際から移動して椅子に座ると

前の席の椅子に座った幹也が
何故か嬉しそうに笑ってる

締まりのない顔を眺めながら首を傾げる



「学校でふたりっきりってなんか良いな~って」


ふたりっきりって言っても
学校にはまだ先生もいるし
他のクラスには私たちと同じように残ってる人も
いるだろう

ただ、今この教室にいるのは幹也と私だけ



……そういえば、こんな風に学校で幹也とふたりっきりってあんまりないかも



「昼はミオにかさねちゃんとられるし」


そうだ
お昼はミオとふたりでお弁当を食べる事が多いから、余計に


「でも、朝と帰りは一緒でしょ」


学校でふたりっきりはあんまりなくても
朝や帰りは別

朝は約束してなくても迎えに来るし

帰りも同じ

用事や部活があって遅くなっても
幹也は先に帰らないで今日みたいに私を待ってる

例のごとく忠犬のように

休憩時間の度、クラスは別なのに会いに来るし



「足りないよ」