繁華街の光。



住宅街の闇。



同じ街なのになんでこんなに違うのか・・・。



バニラとベルガモットの香り。



床に転がるお酒の缶。



もう何度過ごしたかわからないこの環境。



心がじっとしていられない時はこうしていると自然と落ち着く。



近くにあったタバコに火をつける。



高く上がっていく煙。



『じゃあ、湊都も私に会いに来る時は女のことで辛いことがあった時なの?』


『・・・あぁ。そうかもな。』



胸が苦しくなる。



心が落ち着かなくなる。



何かわからないけど嫌。



色んな感情が渦巻く。



最近ずっとこうだ。



湊都のことを考えると胸が苦しくなる。



あの言葉が忘れられない。



あの時の湊都の顔が忘れられない。



あの時の湊都の声が忘れられない。



湊都という存在が私を苦しめる。



タバコの火を消し、窓際から離れた場所にあるソファに腰かける。



テーブルの上に置いてある花が目に入る。



ピンクのバラの花束。



翔が前にくれた花束。



捨てるのも勿体なくてドライフラワーにして保管してあった。



「私、翔のこと考えても苦しくならないんだ・・・。」



ぼそっと口に出した言葉に自分で動揺する。



翔には許嫁がいる。



女がいる。



でも、考えても苦しくない。



その事実が指すのはひとつだけ。



「私、湊都が好きなんだ・・・。」



ようやく分かった。



ようやく気づけた。



湊都が好きだからこんなにも苦しいんだ。



その事実はあまりにも残酷で。



もっと私を苦しめた。