「家のことは任せた。たぶん、帰って来るのは夜中を過ぎるだろうから先に寝ていてくれ」

ホームズさんに言われ、「わかりました」と私は返事をする。ホームズさんは事件になると、眠ることも食べることも忘れて調査に没頭する。その活動力は本当にすごいと思う。家に帰って来ても、勝負のことを考えているんだろうな。

「ホームズ、ここのことは任せてね!また話を聞かせてほしいけど」

ワトソン先生と一緒にホームズさんを見送る。閉まりかけたドアの向こうで、ホームズさんが真剣な目を向けていた。どうして、そんな目を向けるんだろう?

「和香、紅茶でも飲む?」

ドアが完全に閉まった後、ワトソン先生が微笑みながら言う。私は「はい」と頷き、「じゃあ行こうか」とリビングへ二人で戻った。



それから、ホームズさんはルパンさんとの勝負に目を輝かせ、朝早くに家を出て夜遅くに帰ってくる日々が続いていた。たぶん、休んだりはしていない。

ワトソン先生は、診療所の仕事が早く終わった日でも家にいることが多くなった。医学書にずっと目を通していて、私が買い物に行こうとすると一緒について来る。不思議でたまらない。