「ワトソン先生、お疲れ様です。紅茶をどうぞ」

「ありがとう、和香」

掃除を終えたワトソン先生に紅茶を渡す。飲んでしばらくすると、ワトソン先生は眠り始めた。睡眠薬を入れたから。

「ありがとうございました」

そう呟き、私はホームズさんとワトソン先生への手紙をテーブルの上に置く。そして部屋に戻ってキャリーケースに入れた荷物を持って家を出た。否、もう家じゃない。

二人の迷惑にこれ以上なりたくない。だから、私はこの家を出ることにした。二人が追って来ないようにフランスに逃げる。

楽しかった日々を思い出して、涙があふれてくる。でも、足を止めることなんてできない。

私は空港に向かった。