「ホームズさん……」

私は一気に恥ずかしくなり、一瞬暗証番号を打つのを躊躇ってしまった。

ホームズさんが暗号にしたのは、「WAKA」。私の名前だ。

暗証番号を恥ずかしいと思いながら打つと、箱の蓋が開く。中にはたくさんの資料が入っていた。私はその一つ一つに目を通していく。

「……どういうこと？」

その箱の中に入っているのは、全部一人の男性に関するものだった。その名は、ジェームズ・モリアーティ。手紙をホームズさん宛てに届けていた人だ。

「ジェームズ・モリアーティに関する資料」
××年、××病院にて産まれる。父親の仕事の都合で十八歳までドイツにいた。ロンドンに戻ってからは××株式会社に就職。しかし、三年後に退社して自分で会社を経営し始める。

そのような文章の中に、まだ未解決事件としてたまにテレビで取り上げられる殺人事件がいくつも書かれていた。この資料によると、その未解決事件は全てこの男性によるものだという。