「なぜ、ここに……?」

私が訊ねると、ルパンさんは「あなたに会いたくて」と微笑む。私の頭に浮かんだのは、ホームズさんのこと。勝負は結局どうなったんだろう。

「勝負なら、僕の負けですよ。ホームズさんに計画が見抜かれてしまいまして……」

ルパンさんは私にゆっくり近づく。そして私の目の前にしゃがみ込んだ。

「代わりにこのお宝を頂戴しますね?」

私の両頬がルパンさんにふわりと包まれる。顔を動かすことができない。そして、ルパンさんの顔がどんどん近づいてくる。

もしかして、キスされる!?そう思って目を閉じると、私の頬に柔らかい感触がした。私は驚いて目を開ける。ルパンさんがいたずらっ子のように笑っていた。

「あなたに会えてよかったです。またいつか、お会いしましょう。その時は……」

ルパンさんはもう一度、私にキスをする。今度は唇に近いところに……。体中が熱くなる。

「あなたの唇を奪います」

そう言い、ルパンさんは窓から暗闇の中へ消えていった。その刹那、部屋に静寂が戻る。