ホームズの子孫には秘密がある

私は、そのまま家に帰ろうとしたんだけど、なぜかその男性の後ろ姿から目を離せなかった。ドクドクと心臓の鼓動を感じる。嫌な予感は心に降り積もっていった。

視線を感じたのか、男性が私の方を振り向く。そしてニコリと微笑んだ。なぜかその微笑みに恐怖を覚える。私は慌てて男性に背を向けて歩き出した。

家のドアを開けると、ワトソン先生が目の前に立っていた。ニコニコ笑っているけどどこか怖い。

「どこに行ってたの?」

「えっと……パセリを切らしてしまって……」

「リビングに行ったらいないし、どこに行くかは言われてないし、何かあったんじゃないかって心配したんだよ?」

「す、すみません……」

ワトソン先生ってこんな人だったっけ?最近は戸惑ってばかりだ。その刹那、ふわりとワトソン先生に抱きしめられる。

「次からはちゃんと言ってね?」

「はい」

人の温もりを感じている時は、戸惑いも恐怖も忘れられる。男性に感じた恐怖も、ホームズさんやワトソン先生に対する戸惑いもなくなっていった。