ワトソン先生は笑っているけど、真剣な声で話している。私の胸に変な感情が走っていく。何だろう、これ……。

「私、小さな子どもじゃないんですよ?ワトソン先生は事件現場に行きたくないんですか?」

「今回は僕は全くの専門外だよ。普段はほら、殺人で医学が関係しているところもある。でも今回は窃盗。医者の僕が行っても役に立つことはないよ」

これ以上話すことはないとワトソン先生はリビングから出て行く。そして、自室へと行ってしまった。私は仕方なく調理を再開する。

その時、パセリを切らしてしまっていることに気付く。大切な彩りだ。欠かせない。

火を止め、私はかばんを手にする。早く行って帰って来よう。パセリは近くに売っているから、ワトソン先生に声をかける必要はないはず。

夕日が沈んでしまったとはいえ、道には多くの人がいた。私はすぐにお店に向かう。いつも買い物をしているからか、パセリはすぐに見つけることができた。