雨は好きじゃない…。
だって、あたしの大切なものを、いとも簡単に奪っていくから…。


‐愛智(あち)の母親・夏夜(かよ)は、よく笑う可愛らしい人だった…。
だけど、ある日の朝、目覚めるとはいなくなっていた…。

ふ、と窓の外を見ると、雨が降っていて、雨音がうるさくて、愛智は思わず耳を塞いだ‐。


‐数十年前

「だからあれはいとこだってば!」

夏夜は泣きながら、光世(こうせい)に言った。
光世は夏夜の髪の毛を引っ張っている。

「じゃあそのいとこに、今後、馴れ馴れしくすんなって言っとけ」

「そんな事、言えるわけない」

「ああ゛!?
てめぇ、俺の言う事が聞けないって言うのか?」

「ごめんなさい、でもそれは…う゛」

光世が夏夜のみぞおちを殴る。