先に別れ話を持ち出したのは俺の方だった。
──あれは、紗永のお誕生日の日。
一緒に映画を見て、食事をして、遅くなり。
別れる雰囲気なんてこれっぽっちも醸し出していなかった。
紗永を自宅の付近まで車で送った。
運転席にいる俺は紗永の顔色を何度も伺った。
そうだ、今がチャンスだと思った。
『秘書を辞める紗永にもう俺は魅力を感じなくなったんだ。秘書をしている紗永が好きだった……』
俺は車の助手席に座っている紗永に直接そう言った。
『最後に……、これっ。お誕生日おめでとうございます』って、あのルームランプを紗永に手渡した。
紗永は涙一つ溢さず、いつもの優しい笑顔で『ありがとう』と受け取り助手席の車のドアを静かに開けて降りた。
そして、その後、紗永は一度も振り返ることはなかった。



