探偵I(タンテイアイ)【第2巻】




この日、泰平が自宅に戻ることができたのは午後10時30分過ぎだった。




泰平は帰宅後すぐに浴室で自分の全身を何度も念入りに洗ったが全身に染み込んだ渡辺 紗永の部屋の匂いはすぐに取れるものではなかった。




髪の毛、爪の間、鼻の奥、体の表面の皮膚、身体中に渡辺 紗永のあの匂いが……あの匂いが……、こびりついて離れない。




201号室の渡辺 紗永の部屋に入る前、武市さんが透明な衣装ケースから取り出して俺に必ず着るようにと手渡された一式の荷物。




それは、防護服、ゴーグル、マスク、グローブ、シューズカバーだった。




俺は部屋に入る前は何故こんな物が必要なのかと首を傾げていたが……。




泰平が今になって武市から渡された物の重要性が身にしみてわかったようだった。