武市から「まだ、帰らないで下さい。仕事は、終わっていませんよ。仕事は、これからですから……」と声を掛けられて足を止める泰平。
洋室のリビングの床に、瓶海苔を広く大きく溢したようなシミがどっぺりと広がって床に敷いていたカーペットにしっかりと染み込んでいた。
その深く染み込んだ黒いシミの上には何百匹という白い小さな蛆虫がうじゃうじゃとはって動いていた。
顔を上げると、四方八方にブンブンと音を立てて何匹もの蝿が飛んでいる。
そして床をよく見ると、数匹以上のゴキブリが床を行き交っている。
武市に「あのっ、御遺体の一部を踏まないで下さい」と声を掛けられて泰平は驚き足を上げようとするが、もうすでに足先から何匹かの蛆虫がはい上ってきていた。
泰平が何度も足を振って蛆虫を振り払おうとするが簡単に蛆虫は離れようとしない。
なっ、……何なんだこの光景は……、と言葉を失い、唖然としている泰平。
これが遺体?
肉も骨もない。
この黒い液体が、……遺体。



