「今日は、ホワイトロールケーキを作ります」

先生がそう言い、材料やレシピをホワイトボードに書いていく。倉本巳冬(くらもとみふゆ)はため息をつきたくなるのを堪えた。

ここは調理専門学校。巳冬は将来パティシエになりたいためにここで学んでいる。しかし、たまに料理を作るのが憂鬱になることがあるのだ。

それは、スノーオムレツや鱈のトロロ蒸し、ミルクプリンなど白いスイーツや料理を作る時。巳冬は白色が昔から好きではない。

しかし、そんなことを言ってはいられない。オーブンを余熱したり、天板にバターを塗ったり調理に取り掛かる。

巳冬が顔を上げると、目の前には鏡があった。そこに映る自分の顔から慌てて巳冬は目をそらす。

巳冬の髪や肌は、まるで雪のように白い。瞳は黒い色をしているが、その他は全て真っ白だ。巳冬はアルビノというものだ。生まれつきメラニン色素が少ないため、肌の色などが違う。

アニメなどでは、髪の色や目の色が違っても気にされない。二次元だからだ。しかし、現実では違う。アルビノのせいで、巳冬は何度も傷ついてきた。