「うん、見つかったから戻るね。皇くん、今どこいる?」

 先生に軽く会釈して衣装を手に教室を出ようとしたその時、スリッパの爪先が床の木目に引っかかった。

「あっ……」

 両手が塞がった状態で体が前に倒れ、転ぶ寸前。後ろから先生に腕を取られ、わたしの体は床に打ちつけられる前に止まる。
 とん、と背中が先生の胸元に収まった。

『桃?』
「大丈夫か」

 皇くんの声に被るように問いながら先生がわたしの肩を引く。あっと思った時には遅かった。身構える間もなくわたしの表情が先生の目にさらされてしまう。

 一瞬、頭上で先生がはっとしたような気配があった。
 ……全然大丈夫じゃない。こんな赤くなった顔、先生に見られてしまうなんて。