【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい


 それから先生は、視線だけをグラウンドに向けて呟いた。

「森下、借りられてたな」

 思いがけない言葉に、ドキンと心臓が揺れる。全校生徒の前で走ったのだから、見られていることなんて当たり前だ。けれど自分が先生の目に映っていたのだと改めて思うと動揺してしまう。

「見てたんですか」
「ああ、見てたよ。俺も若けりゃああしてたのかな」
「え?」

 その時、静かな空気を揺らすようにポケットの中のスマホの着信音が鳴った。慌ててジャージのズボンからスマホを取り出し、相手も確認しないまま着信に出る。

「もしもし?」
『おー、俺』

 電話の向こうから聞こえてきたのは、気怠げな低い声。

「皇くん?」
『衣装、見つかったか?』

 皇くんの問いかけと同じタイミングで、机の中から衣装を見つけだした。