半ば引っ張られるように、皇くんの背を追って走る。
こんなに速く走ったことなんてない。走れない。自分の見たことのない景色が、視界を通り過ぎていく。
他の足音はまだ追ってこない。
そしてわたしを連れた皇くんは、他を寄せ付けないままゴールテープを切った。
『一位は今回もぶっちぎり、皇くんです! ここで皇くんが引いたお題を発表しましょう! お題は……〝一番可愛いと思う人〟です!』
興奮した様子のアナウンスに、目が回るほど息を切らしたわたしは、思わず疲れも忘れて目を見張った。
「え……」
ゴールを切っても、わたしに背を向けたままの皇くん。
『これは公開告白なのか……! なんと初々しいのでしょう! 女子からも悲鳴があがっております! おっ、2位、3位が続けてゴールしました! お題は……』
思いがけない展開に頭が追いつかない。あの皇くんが、わたしを可愛いって思ってくれているってこと? いやいや、まさか……。


