皇くんの出番はまだだろうか。見てろと言われからには、その勇姿を見逃すわけにはいかない。
すると、その時、待機列の中で数人の男子と共に銀髪の男子が立ち上がった。タイミングよく、次が皇くんの番らしい。
どうかいいお題を引けますようにと祈る中、スターターピストルの音に合わせ、圧倒的な瞬発力で駆けだした皇くん。
『さぁ、8組目がスタートを切りました!』
体育祭委員会長のアナウンスにも熱がこもっている。
地面に落ちる札を真っ先に拾ったのは、やはり皇くんだった。
札に書かれたお題を見ると、すぐに顔をあげた。なにかを探すようにあたりを見回している。
『彼らが引いたお題はいったいなんでしょうか! 答えは今回もゴール時に発表致します! ……おおっと、最初に動いたのは徒競走でもぶっちぎりの速さで圧勝した皇桐くんです! 足だけではなく運も強いのか……!』
皇くんは走りだした。――なぜかこちらに向かって。
「桃!」
こちらへ駆けながら、皇くんがわたしの名前を大声で呼んだ。
「えっ?」
「来い!」
有無を言わさないように怒鳴られ、なんの心構えもしていないままおずおず前へ体を出すと、走ってきた皇くんがわたしの手を掴んだ。そして迷いなくゴールへと走りだす。
『皇くんが借りてきたのは、同じクラスの森下さんです! いったいお題はなんなのでしょうか!』


