【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい




 そしてついに、選手宣誓の元、体育祭が開幕した。
 賑やかでアップテンポな音楽が流れ、歓声があちこちで飛び交う。

 体育祭1種目目の徒競走は、始まりの競技にふさわしく、グラウンドを揺るがすほど盛り上がった。
 始めに各学年の女子が走り、わたしの結果は6人中1位という快挙を成し遂げた。梅子は運動神経がまったくなく、徒競走の類が大嫌いだったから、こんなにも速く風を切ることができて走るのが楽しかった。サラちゃんたちにもたくさん褒めてもらった。

 女子が走り終えると、次は男子の番だ。
 足の速い男子に向けられる女子の歓声はすさまじい。そして一番歓声を湧かせたのは、皇くんだった。

 体育祭の参加が初めてなのはもちろん、サボりがちな体育でも本気で走っている姿を見たことがなく、その足の速さは未知数だった皇くん。けれどスターターピストルの音に合わせて弾丸のように駆けだした皇くんは、他を一瞬も引き寄せることなく圧倒的な速さでゴールテープを切った。途端、興奮に染まった歓声がグラウンドを揺らす。

「本気で走ってる皇くん、ちょっといいかも」
「怖い人だと思ってたけど、熱い感じがかっこいい!」

 あちこちから聞こえてくる皇くんを称える声に、まるで自分の息子が褒められているような気になって鼻が高い。

 ゴールをした皇くんはなにかを探すようにあたりを見回し、それから応援席にいたわたしと目が合うと、見てたかというようにニカッと笑ってこちらを指さしてくる。
 思いがけず飛び出た皇くんの笑顔に黄色い悲鳴があがったのは言うまでもない。
 圧倒的な走りのあとに屈託ない笑顔を向けられ、そのギャップに思わず一瞬どきりと心臓が揺れて、暑さのせいかそれとも別のなにかのせいか、ほんのり頬が熱くなった。