「……えっ、なに?」
見上げると、皇くんは太陽を背に、けれど影に負けない強い光を瞳にたたえてわたしを見つめていた。
「数ヶ月前までの俺だったら、体育祭なんて参加しようとは端から思わなかった。馬鹿らしい、くだらないって、やる前から決めつけて目を向けることだってしなかった」
こちらに注がれる、見たこともないほどの真剣で誠実な眼差しに、思わず瞬きをすることも忘れる。
「最初はあんたへの嫌がらせだったかもしれねぇけど、あんたと一緒だったから学校も悪くねぇって思えた」
「皇くん……」
皇くんはそう言ってくれるけど、わたしはなにもしていない。けれど皇くんの言葉はとても嬉しくて、じんじんと痛む心の見えない傷に消毒液のように染みた。
「俺の走りから目離すなよ」
銀色の髪からは浮いた赤いはちまきを巻いた皇くんの表情は、とても清々しくて眩しくて、わたしはきゅっと口角をあげた。
「うん。皇くんから目離さないでいるよ、わたし」
「おう」


