すると、その時。皇くんの肩越しに、少し離れたところを歩く先生の姿を見つけた。長袖のジャージの腕をまくり、紺色のジャージを着こなした先生は、今日も絵になるくらいかっこいい。
……けれどそんな先生に、男子たちの目を惹きつけながら駆け寄る影がひとつ。
「綾木先生!」
松尾先生だ。
呼びかけに足を止めた先生に松尾先生が話しかけ、ふたりでなにやら難しそうな話をしている。生徒が入っていくことはできない、教師間の空気感がそこにはあって――。
「おい、桃」
知らないうちにぼーっとそちらを見つめていた視線と意識が、呼ぶ声によって皇くんへと引き戻される。


