「どうですか?」
褒めてもらいたくて期待のこもった眼差しで見上げると、先生はなぜか眉間にしわを寄せ、腕を組んだまま上から下まで視線をスライドさせた。
あれ、なんでか不機嫌……? そう思ったのも束の間、不意に落ちてきたのは、期待した褒め言葉ではなく、先生が持っていた出席簿の背表紙だった。こつんと頭を叩かれ、不意打ちをくらったわたしは頭を抑える。
「いたっ?」
すると、先生はこちらに目もくれないまま、教室の奥で衣装の採寸をしている手芸部部長の佐々木さんに声をかける。
「佐々木」
「はい」
「このクラス、スカート膝上禁止な」
突然の先生の指示に、佐々木さんが驚きと抗議の声をあげる。
「ええ! その膝上のバランスが萌えるのに! なんでですか!」
「なんでも。担任権限」
有無を言わさないみたいにそれだけ言って、先生はすたすたと歩いて行ってしまい、「職権濫用だー!」と佐々木さんの声が教室にこだましたのだった。