【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい


「は、はい……!」

 突然渡されたバトンに、背中を押されたように勢いよく立ち上がる。
 まさかSHR中に時間を設けてもらえるなんて。

『手を引っ張ってやるから』

 不意にどこかで、昨日の先生の声が聞こえた気がした。

 こうなったら躊躇っている暇はなく、緊張で声を上擦らせながらクラスに呼びかける。

「え、ええと、体育祭の日、みんなで体操着の裏にお揃いのゼッケンをつけたらどうかなと思って作ってきました……! 今から配ります!」

 それから早速できたての全員分の手作りゼッケン配る。すると、それを手にしたクラスメイトたちから、わいわいと好感触な声が続々上がる。

「すごー! 森下さんって器用なんだ」
「クラスでお揃いなんてテンションあがっちゃう。森下さん、ありがとう」

 などなど、耳に届くのは不安を覆すように嬉しい声ばかりで。

 だけど教室一番後ろの列の席が、ひとつぽっかり空いている。その席の主――皇くんは遅刻らしく、朝一番で彼に渡せなかったことは少し残念だった。