体育祭委員になってしまったその日から、皇くんは『惚れさせてやる』という宣言どおりちょっかいをかけてくるようになった。
 どうやらあの宣言は本気だったらしく、欠席しがちだった皇くんが最近は毎日登校している。

「おい、桃。デート行くぞ」
「だから皇くん、そうじゃなくて買い出しだから……!」

 放課後を迎えるなり机の前に立ち塞がり、勝手にわたしのスクールバックをかっさらった皇くん。
 教室で、しかもそんな大声でデートなんて言われたら、勘違いという被害も及ぼしかねず必死で彼を制する。
 今日は、体育祭の時にクラスで使う応援グッズを買いに行く日だ。体育祭委員だからクラスを代表してふたりで行くだけなのに、皇くんはデートだと言ってきかない。

「皇くんと森下さん、もうあんなに仲良くなってる」
「実は付き合ってたりして」

 わたしたちのやりとりを眺め、予想どおり好き勝手話しているクラスメイトたち。サラちゃんたちも面白がって止めに入ってくれない。
 あらぬ誤解を受けていることに気づき、それはない!と慌てて反論しようと立ち上がる。けれどその前に、皇くんが後ろから首元を引き寄せられるように抱きしめられた。というか首を絞められた。

「ぐえっ」
「俺の女だから、だれも手出すなよ」

 耳元に顔を寄せ、みんなにそう宣言する皇くん。途端に女子たちから黄色い悲鳴が上がる。