「静かに」
先生がこほんと咳払いし、話が脱線して盛り上がった場をとりなす。いつにも増して先生がローテンションなのは、先生が夏とお祭り騒ぎが嫌いだからだ。
「そこでこのクラスからも体育祭委員をふたり選出しようと思う。やりたい奴はいるか」
先生の声に、先ほどまでとは一変、シーンと教室が静まった。
体育祭委員というと、放課後にある準備や応援合戦への参加、当日の役割など、面倒なことが多いだけでメリットがないため毎年やりたがる人はおらず、結局じゃんけんで決めることになるのだ。
先生を困らせるくらいならわたしが積極的に手を挙げたいところだけど、先生と食べるおいしい夕食を作ることを考えると、放課後は早く帰りたいから体育祭委員になることは避けたいところだ。
「いないようなら、じゃんけんで……」
教室の空気を察した先生がそう言いかけた、その時。
「俺、やりまーす」
静かな空気を不躾に破る、気怠げな声が教室に響き渡った。