【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい


 ふわふわな髪に、丸眼鏡がよく似合う彼。
 この人のことをわたしはよく知っていた。綾木くんの幼なじみの柳くん。……とは言っても、わたしの知っている柳くんの姿とは10歳ほどの乖離があるけれど。
 そして足下にしがみつく、4歳くらいの小さな女の子がひとり。

 柳くんは他校の生徒で、綾木くんのストーカー中に見かけたり、綾木くんからたまに話を聞く程度で、直接話したことはない。けれど、綾木くんが柳くんに気を許していることはよく知っていた。

「立てる?」
「はい」

 手を差し伸べられ、その手を借りてなんとか立ち上がったけれど、ズキンと足首が痛んで思わず足をしかめた。さっき転んだ拍子に捻挫してしまったらしい。

「大丈夫?」
「ありがとうございます、柳さ……」

 あ、と思った時には遅かった。わたしはつい柳くんの名を口走ってしまっていたのだ。
 柳さんがそれを聞き逃してくれるはずはなく、きょとんと目を丸くする。

「どうして俺の名前を?」
「あ、えーと……、担任の綾木先生からお話を伺ったことがあって……」

 しどろもどろになりながら、なんとか誤魔化しの言葉をひねり出す。穴だらけの誤魔化しだったけれど、柳さんは綾木くんの名前が出た途端、目を輝かせる。