高校からの帰り道。高校からマンションまでは徒歩で20分ほどだ。

 このところじりじりと肌を這うような暑さが続いていたけれど、今日はあいにくの曇天。
 徒歩にはちょうどいいと思ったけれど、少し歩いたところで肌寒いことに気づいた。

 今日一日、先生の目を見ることができなかった。
 先生にはもう近づけない。そう思っているのに、未練がましく先生を想ってしまう自分の心が憎らしい。この心は主の言うことをちっとも聞いてくれない。
 この想いはいったいどうしたらいいんだろう……。

「この後どうする?」
「家でこの前買ったDVD見たいな~」

 不意に、わたしの横を抜き去っていくカップルの会話を耳が拾い、意識が現実世界へとたちまち引き戻される。