【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい


「俺の彼女になにしてんの」

 背後から聞こえてきた声に、目を見張る。顔を上げれば、振りかざされた臼井の手を綾木くんが掴んでいるところだった。

 違うクラスであるはずの綾木くんの突然の登場に驚いたのは、わたしだけではなかった。いじめの現場を目撃されて、臼井は目を白黒させしどろもどろになる。

「綾木くん……。違うの、これはっ……」

 弁解しようとする臼井。けれど綾木くんはそれを切り捨てた。

「汚い手でこいつに触れんな」

 そして綾木くんは、傍観していたわたしのクラスに向かって声を張り上げた。

「俺の彼女に手出す奴は、男だろうが女だろうが容赦しねぇから」

 綾木くんの牽制に、こちらの動向に注目していた教室がしんと静まり返る。
 痛いほどの静寂を破ったのは、臼井の震える声だった。信じられないというように目を見開き、綾木くんを見つめる。

「ほ、本気で言ってるの……?」
「本気だよ」

 綾木くんはそれを一蹴すると、わたしの手を引いて、廊下を歩き出した。