「……っ」
息をのむ。鼻の奥がつんとする。
先生はうなされているのか、縋るようにわたしの手をぎゅうっと握りしめている。先生はまだあの日にとらわれているのだ。
わたしが梅子だったなら、今先生の求めるわたしだったなら――。
涙をこらえていると、先生の手の力が弱まり、どさっと手がベッドに落ちる。
「ごめんなさい……」
わたしは謝ることしかできずそっと囁くと、先生の額に乗せるためのタオルを探しに、立ち上がった。
そのたんすは、先生が使っているところすらあまり見たことがなく、息を潜めるようにひっそりとリビングの隅に佇んでいる。
パタパタとスリッパを鳴らしながら近づき何気なく引き出しを閉めようとした。――けれど、ふと隙間から見覚えのあるものが見えて、引き出しにかけた手を少し引いた。
そこは、茶色い木の底がところどころに見えるほどには物が詰め込まれていない空間だった。
その中から、引き寄せられるように一枚の紙を手に取る。
「これ……」