先生の部屋の前に立ってみると、急に不安になってきた。突然訪ねたりしたら、迷惑ではないだろうか……。生活音を盗み聞きしていたなんてバレたら、気味悪がられるんじゃないだろうか……。
 けれど、際限のない渦に巻き込まれそうになる自分のネガティブ思考を振り払う。何事もなかったら、それでいいのだ。わたしがどう思われようと、先生が無事ならそれでいい。
 意を決して呼び鈴を鳴らしてみる。けれど室内からはなんの反応もない。なにか漠然とした不安に襲われドアを引いてみると鍵はかかっておらず、そっと足を踏み入れる。

「失礼しまーす……」

 小声で言いながら中に入ると、部屋は電気も点いておらず真っ暗だった。
 そして部屋の奥へ進んだわたしは、そこに広がる信じがたい光景に目を見開いていた。一気に体から血の気が引き、心臓が止まりそうになる。先生が床の上に倒れていたのだから。

「先生……っ!」

 わたしは声を悲鳴に近い声を張りあげ、地面を蹴り出していた。