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宿舎の正面玄関には、先生の帰りを今か今かと待ちわびるひとりの生徒の姿があった。ハンカチを落とした4組の女子だ。先生は彼女を見つけると、濡れた体を乾かすのよりも先に、持ち主である彼女にハンカチを渡している。
「わー! さきちゃん先生、ありがとう! これ、お気に入りだったの……!」
「それはよかった」
めでたしめでたしな光景に頬を緩ませていると、中から皇くんやサラちゃんたちが駆け出てきた。
「桃ちゃん! 心配してたんだよ~! 無事でよかった!」
泥だらけにも関わらず、サラちゃんは躊躇いもせず熱い抱擁をしてくれる。
「頑張ったね!」
「ヒーローだよ、桃ちゃん」
「えへへ……。みんな、ありがとう」
わたしに向けられる優しい言葉の数々にじんわりと胸が熱くなって、涙が出そうになる。