【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい


「でも、新学期早々彼氏に浮気されて、勉強が手につかなくてテストも散々だった時に、先生が私の異変に気づいて悩みを聞いてくれたんだ。それで全部打ち明けたら、俺の教え子を泣かせるやつなんか別れて正解だって言ってくれたの。なんかもう、それがすっごく心強くてあったかくて泣けちゃって。高校生の恋愛に本気で向き合ってくれる先生がいてくれるなんて思ってなかったから」
「そう、だったんだ……」

 大出さんの言葉に、わたしの方まで胸が熱くなる。生徒の心を変えてしまえるほど立派な先生になのだなと、改めて実感してしまったから。

 大出さんはそれからなにかを思い出すように、んーと首を傾げた。

「あと、変なことわざも教えてくれたんだよね。なんだっけ、雨降って地固まって……」
「……虹が出る」
「えっ、知ってんの?」

 ぽろりと口からこぼれた言葉に、自分で言っておきながら目を見開く。
 すると大出さんは大きく頷きながら笑った。

「そう、それそれ。地固まるだけじゃ足りないんかい!ってね」

 まさか、梅子の口癖を先生が覚えていてくれたなんて。泣きそうになるくらい切なくて嬉しくて、

「あれ、森下さん、泣いてる!?」
「へへ、玉ねぎが目に染みたかも」

 一気に目に滲んだ涙をこぼさないようにするのに懸命だった。